INTERVIEW 事例紹介

どんな人も変わる可能性がある。自分の可能性を拡げるチャンスを提供したい。

株式会社 商船三井
人事部長
安藤美和子 様

どんな人も変わる可能性がある。自分の可能性を拡げるチャンスを提供したい。それを信条に組織運営に生かしていらっしゃるのが株式会社商船三井・人事部の安藤美和子部長です。今回は、ご自身のキャリアの原点を振り返りながら、現在のお仕事を行う上で大切にしていらっしゃることをお話しくださいました。


 

福田:安藤さんに初めてお会いしたのは10年以上前でしたね。

安藤:グローバル・エデュケーションさんとは、いろんなことでご一緒させていただきましたけれども、私が印象に残っているプロジェクトが2つあります。1つは、MBO(Management by Objective)コーチング。導入当時は、自分も課長になったばかりだったので、「部下に目標を設定させて、それをどういう風に達成させるかを実践する上でコーチングがとても大切」ということを研修で学びました。コーチング研修はそれ以前も、単独で導入していたのですが、MBOコーチングという形では初めてでした。そのMBOコーチングが社内でとても評判になって、新任マネージャーたちが初めて管理職になって迷っている時に、研修を受けたことですごく助けになったという声を本当に多くいただきました。そういう意味で、いいプログラムだったなと思います。

2つめは、当時の一般職を対象とした海外短期研修でした。当時は、一般職の人たちが自分で手を挙げてチャレンジできる制度が限られていて閉塞感を打破するために作ったプログラムでしたが、参加した社員は、本当に今でも活躍している人が多いんですよ。海外研修で、自分の可能性の広がりや、自分の守備範囲は無限だからチャレンジしようというマインドになった人が多かったと思います。中には、研修から帰ってきた後、総合職に転換した社員もいますし、まさに、こういったチャレンジを象徴する1つがこの海外研修でしたね。

グローバル・エデュケーションさんは、最初から研修ありきではなく、抱えている課題を相談しながら、解決方法をカスタマイズして作っていただける。そのカスタマイズ力は御社の強みだと思います。先ほどお話した2つも、当時の課題感をお話しして、研修をカスタマイズしてご提案いただいたなと思い出していたんです。

福田:ありがとうございます。初めて安藤さんにお会いした時は、私にとって衝撃でした。目線がいつもとても暖かくて、今後会社の人材育成をどうやっていこうっていうことを常に考えていらっしゃいました。人材育成の分野は、課長になってから初めての分野だったんですよね?

 

念願の人事部。でも、「他人の真似していない?」

安藤:そうです。課長になってから初めての分野でした。私は入社して最初はコンテナ船の営業を5年行っていました。当時、年に一度の自己申告で、配置転換の希望を書くときに、初めて書いたのが「人事部」でした。入社してから、わりと早い段階で人事をやりたいって書いたんですね。入社した時に、当時の人事部の課長に「会社の業績も決して良いわけではない時に、こんな厳しい業界に来てくれてありがとうね」って言われたんです。それがすごく嬉しくて、入って良かったなって思いました。やっぱり社員がこの会社に入って良かったなって思えるような会社にしたい、そういうことに関われる仕事が人事だって思ったんですね。なので、育成なんて初めての分野でしたけれども、念願の人事部に異動できたっていうのがすごく嬉しかったんですよね。

ただ、やっぱり異動してきたものの、大変でした。私は研修関係を担当するということで前任から引き継いだのですが、前任のやっていたことをそのままやるので精一杯だったんです。だから踏襲するのみで、そういう自分が情けなくて、これでいいのだろうかと、最初の一年くらいは悶々としていました。そんなある日、隣の部署の方に言われたんです。安藤さん、他人のやっていたことばかりやっているだけで、自分の思っていることをやっていないんじゃないの?人の真似をしようとしていない?って。その時にグサっと、すごく痛いところを突かれちゃった気がしたんです。自分は何がやりたいんだろうということを考えずに、今までやってきたことをきちんと行うということばかりに邁進していて、それを突き付けられた感じでした。そこから、もう一度何が必要なんだろうって考え直したんです今までやってきたプログラムであっても今まで通りでいいのかなとか、もっとこういう風にやったらいいのかなっていうのを自分なりに考えて、それを提案するようにしましたね。

当時から商船三井は社員からの提案を積極的に受け入れる文化があったので、先ほど申し上げたMBOコーチングの導入や、一般職がもっと活躍できる場を作りたい、というのも提案しました。総合職と一般職は違うものだ、という意見も多い中で、一人の人間として誰だって成長したいし、そういう機会を作ることで人は変われるっていうのを、喧々諤々と議論して、最後は認めてもらいました。人事部への異動当初からスムーズだったわけではなくて、最初は苦しんで七転八倒でしたね。

 

実体験から学んだ「人は変われる」

私は自分自身の会社生活が決して順調ではなかったんですよ。最初の営業部門では、グローバルビジネスに関われると思って、すごく嬉しかったんです。でも、海外出張にも行かせてもらったのですが、英語がよく分からなくて苦労しました。ある意味、挫折というか、私って全然ダメだなって思っていましたね。あと、社内の登用試験で3回落ちて4回目で合格したりとか、とにかく失敗ばかりしていたんですよ。それなのに、最後の登用試験になんとか合格して、いろんなチャンスをもらってきたと思っています。だからこそ、最初はダメでも変わってこられたということを自分自身での体験で学んできているので、どんな人も変われるし、可能性がある、ということを信じて伝えてきたと思っていますダメな自分が変われた、というのは自分で一番わかるんですよね。あんな私がこんな風に変わったみたいな感じです。それを人事の中でもいろんな場面で出していきたいなって思っています。

福田:安藤さんの原体験でもある、一回うまくいかなかったからといって、それで諦めずに、その経験を糧に予想以上に大きくなっていかれるのは、いま経営で大事だと言われ始めているレジリエントですね。あと、やはり当時から、本当にこの会社に貢献したいって思っていらっしゃるのが伝わってきます。

 

自分自身を決めつけず、様々な経験をすることで、自分の知らない自分を発見する

安藤: いろんな経験をさせてもらったのは大きいですよね。異動って時には自分の思っていたところとは違うところに行って不満に思ってしまったりもしますけれど、どんな経験も自分の血となり肉となり、糧になると思うんです。自分はこうあるべきだ、と頑なに決めつけるのではなく、変化を楽しんでしまう、柔軟性が大切だと思っています。商船三井の長期ビジョンで、「強くしなやかな」というものがあるのですが、しなやかなっていうのが柔軟性ですね。アジャイルという言葉は、最近人事のキーワードですけれども、当社は数十年前から使っていました。自分たちだけではどうしようもない経営環境や外部環境があっても、環境に柔軟に合わせて、時には自らの形を変えながら、捨てるものを捨てたり、新しいものを入れたりっていう、そういうしなやかさが大事だというメッセージを出してきました。

それはまさに組織だけではなく、一人ひとりの個人もそうあるべきだと思っています。自分自身を決めつけることはせず、様々な経験をすることによって、自分の知らない自分を発見するというのは、自分の中でも大事にしてきたことですし、人事部としても発信していきたいことですね。そうすると、自分が変われる経験をさせてもらったことがすごく良かったという思いが、組織へのエンゲージメントというか、感謝につながっていくと思っていますし、もっともっと次にチャレンジしてみたいっていう気持ちにつながっていくのかなっていう気がしますね。

福田:そのあたりは人事部長としてお仕事をされる上で大事にされていることですか?

安藤:そうですね。やっぱり一番基本というか大事にしたいところですね。今年人事制度を変えましたが、その原点というのは、自分自身がどうありたいか?自分で自分のキャリアを広げていく、そんなきっかけになるような制度なんです。今までは、会社がレールを決めて、社員はそれに乗って歩んでいく形でした。それに乗っていれば順調に成長できて、最後はしかるべきポストに就いて、社員も安心だったわけですよね。でも今はそういうのが成立しないし、個人も多様化してきています。何を大事にしたいかは人によって違いますし、より個の価値観を生かしていくことが大切になってくる。会社もそうしないといけないですが、個人も自分のアイデンティティを持って、それを会社に訴えていく、そういう個人と会社の対等な関係を作っていくことが大切です。社員にしてみると、いろんな可能性が広がって良い部分もあるし、逆に自分で選択しなくちゃいけないので、責任を持たないといけないですよね。ただ、これは自分で選んだ道だと思うことで、より納得感が増すし、自分のことを自分で考えるクセがついて、それが個人を強くしていくのかな、と思います。

 

強い個を繋ぎ合わせて強い組織体にする

安藤: 個がより強くなるような仕掛けや仕組みが整ってきたので、今後の課題としては、その人たちをどう繋ぎ合わせて組織体として強くしていくか、だと思っています。つまり、会社のカルチャー醸成や組織開発に積極的に取り組んでいきたいですね。若手、中堅、日本人、外国人問わず、活躍の場を限定せずに強い個人がつながって、より強い組織体になっていくような組織作りを目指したいです。

今回、グローバル・エデュケーションさんにお手伝いいただいた、グローバル経営塾(海外拠点と日本のリーダーを集めた多国籍リーダーシップセッション)では、世界にはこんなに面白いパワフルな人間がいるんだっていうのを、本社の役員にかなり理解してもらえたと思うんです。

福田:聞いていらっしゃる皆さんが前のめりに真剣に聞いていましたもんね。質問が全く途切れなかったですね。

安藤:毎年そうですが、最終プレゼンテーションもさることながら、一人ひとりの個性や、商船三井グループの一員であることを大事にしたいなっていうのが参加者一人ひとりからすごく出ていましたよね。グループの価値観とか、グループをどうしたいっていう思いに溢れていました。だからこそ、ここで終わらせるなっていう社長直々の言葉にもあったように、次の展開に発展させたいです。

研修の成果って、クリアに数字として出すのが難しいところがありますし、何年かかかって成果が出てくる時もあります。プログラムを継続していると、最終提言の内容もより具体的に実現性が高まってきていると感じています。今までは、プログラムを通じて一人ひとりが何を持ち帰ったかというのを研修の成果として見ていましたが、次のステージでは、ここでの提案を会社の業績につなげていくことが大切だと思っています。そうすると、よりグローバル経営塾に対する思いや、社員からの注目もますます高まってくると思いますね。

今回、グローバル経営塾を担当した人事部社員は、このプログラム成功のために、様々な調整で大変だったと思います。ただ、プログラムに参加している人が喜んでくれたり良かったよって言ってくれたりすると、やっぱり嬉しいですし、そういうことを言われると、疲れが吹っ飛びますよね。そうすると、プログラムをより良くするためには、次はこうしよう、こうしようってどんどんアイディアが浮かんでくるものだと思います。人は、やはりやったことのないことをやってみると、自分ってそんなことも出来たんだっていう自信になりますよね。やっぱり人はどんどん新しいことが出来るし、可能性もあるし、変われる本当にそう思いますね。

 

ぶれそうな時に支えてもらえる

福田:それが安藤さんのぶれない軸なんですね。育成だけではなくて、人事施策も色々なこともそこを起点にやられているんだなと改めて感じます。

安藤:その私のメンターだったのは、布留川さんとか福田さんです。いろんな研修会社さんとお付き合いをしていますが、やっぱりグローバル・エデュケーションさんはちょっと違うんですよね。我々の悩みや課題を共有すると、違った視点でいろいろ教えてもらえるんです。自分自身がぶれそうだったり折れそうな時に支えてもらえる何かあったら福田さんに相談しよう、みたいなね。布留川さんの話を聞いていても、グローバル・エデュケーションさん自身がぶれていないっていうか、会社の原点を大事にされていますよね。10年ぶりにお会いした時に組織が大きくなってびっくりしたのですが、一人ひとりが見える位置にいるちょうどいい大きさですよね。組織や会社の在り方とか、すごく勉強させてもらっています。引き続きよろしくお願いします。

福田:挫折がない人はいないと思うんですけど、挫折をどういう風に次につなげるかっていうのは、かなり人によって違うところだと思います。安藤さんは、挫折をされたとしても100倍返しにするようなイメージで、すごくそれを糧にされる方なんだなと思います。でもその時に、自分自身がっていうことよりも、常に会社や周囲の人のことを考えているからこそ、周りの方の助けもあり、うまい循環をご自分で作られているんだなと思います。

安藤:そうであったらすごく嬉しいし、そういう循環が会社にも出てくるといいなと思っています。自分と関わった人が話していくうちに変わっていくのを見るのが好きなんですね。それを自分のエネルギーにしてもらっているような気がするんです。人からもらっているエネルギーで生きているんですよ。やはり、人事って、こういう人と話す時間が大切だと思っています。すぐに目に見えて生まれるものは少ないかもしれないですが、そのような関係性作りが重要だと思っています。

 

 


お話をお伺いしたのは

人事部長

安藤美和子 様

株式会社商船三井・人事部 部長。

1989年大阪商船三井船舶(現・商船三井)に入社、コンテナ事業部門において、北米部向け輸出の営業セールスや予実算管理・海外現地法人管理等を担当。2004年より人事部配属となり、主に教育・研修を担当した後、コンテナ事業の本社組織がある香港に転勤し、アジア・豪州トレードの採算管理を担当。その後、秘書室、神戸のフェリーさんふらわあで勤務した後、2016年人事部長に着任し、現在に至る。