ロンドン・スクール・オブ・イングリッシュ:英語習得にとどまらない多様な学び|事例紹介|人材育成研修・セミナーならグローバル・エデュケーション

INTERVIEW 事例紹介

ロンドン・スクール・オブ・イングリッシュ:英語習得にとどまらない多様な学び

London School of English 様

海外語学学校

London School of English(以下LSE)は、ロンドンとカンタベリーに拠点を持つビジネスパーソン向けの語学学校です。ブリティッシュ・カウンシル(イギリス政府下にある国際文化交流機関)の厳格な審査において最高点を得ている、非常にクオリティの高い語学学校です。今回は、当社の海外研修コーディネーション部マネージャーの布留川瑛美が、マーケティング担当のスコット・ブッシェル氏にお話をお伺いしました。(このインタビューは2020年2月に行い、5月に再度オンラインでフォローアップインタビューを行った内容をもとに構成しています。)

                                            ※東京日本橋にて

ビジネスプロフェッショナルのための実用的な英語学習

布留川瑛美 : 一般的に語学学校というと、学生や若者向けの学校を想像される場合もありますが、LSEは世界有数のビジネスパーソン向け語学学校だと思います。LSEの特徴を教えてください。

ブッシェル氏 : まず第一の特徴は、参加者のモチベーションの高さです。LSEには主に30~50代のビジネスパーソンの参加者が多いのですが、彼らは明確な目的と非常に高いモチベーションがあります。皆さんが想像される典型的な語学学校は、いわゆるアカデミック英語(主に大学進学のための学術英語)に焦点を当てている場合も多いのですが、LSEでは参加者のビジネスニーズに合わせた内容で授業を提供しています。LSEの参加者はビジネスプロフェッショナルで、CEOや起業家なども多いです。彼らにはプレゼンテーション、ミーティング、電話会議など、英語を使って「やらなければいけない任務」、つまり、仕事の現場で英語を使って成果を出さなければならないという実用的な目的があるのです。

2つ目の特徴は、学習する環境です。LSEでは、まず年齢に「30歳以上」という条件を設けているコースがあります。留学開始の時点で30歳以上でない方は、たとえ29歳でも受け入れていません。そのため、LSEに来る参加者の国籍は様々ですが、目的・背景・年齢層には共通点が多く見られます。多様性の中に共通点を見出すことで、伸び伸びと学習することができます。また、クラスの最大人数もロンドン校では8人、カンタベリー校では6人と小規模にしていますので、参加者一人ひとりのニーズにしっかりと応えられる環境を整えています。

3つ目の違いは授業内容のカスタマイズ力です。LSEの授業では決められた教材を使うことはしません。

布留川瑛美:ブッシェルさんもマーケティング担当になる前はLSEで講師をされていましたね。講師をされていた頃は、その週に担当する参加者が働いている企業やその業界についてリサーチすることが、毎週末の習慣だったそうですね。

ブッシェル氏: その通りです。LSEの講師陣はリサーチを含め、各参加者のニーズを理解することを徹底しています。参加者のニーズに合ったものを取り上げることで、「LSEを選んで良かった」と実感し、安心して授業を受けられるという満足感にもつながるのです。参加者一人ひとりのニーズを理解し、それに合った教材を教科書やオンライン記事などあらゆる媒体から入手し、組み合わせて授業をカスタマイズしていきますが、それはスキルのある経験豊富な講師でなければできません。LSEではそれができる質の高い講師が日々活躍しています。また、参加者が仕事のどのような場面で誰と英語を使っているのか(もしくは使う予定があるのか)、を理解することも重要です。英語ネイティブと話すのか、ノンネイティブと話すのかで講師の教え方に違いがあります。もしアメリカ人と話す機会が多ければ、アメリカ人が話す英語を教えます。もしインド人と話す機会が多いのであれば、インド人の発音などを教えます。こういったカスタマイズは、プライベートレッスンを通じて徹底的に行っていきます。

 

仲間とのコラボレーションから生まれる英語以外の学び

布留川瑛美: LSEでは、どのような授業が展開されているのでしょうか?

ブッシェル氏: クラスメート同士がお互いに質問し合うことから英語以外の学びが生まれるのは、LSEの授業の特徴だと思います。異文化はもちろんですが、企業文化の違いについて話すことも多いです。例えば、日本とスイスの銀行の人はお互いに金融システムの違いについて議論しています。同じ業界で働くビジネスプロフェッショナルとして、単なる社交辞令ではなく、純粋な好奇心から質問し合うのです。

授業の工夫としては、単に「普段の業務を英語で行っているだけ」になりすぎないようにしています。もちろん、ビジネス英語の授業ですからトピックはビジネスに関する内容が多いですが、例えば、本業が会計士である参加者にブランディングについて考えさせるなど、あえて普段の業務で使う脳とは違う脳を使うような仕組みを入れます。そういったワークに楽しんで取り組むことで、新しいアイディアが浮かび、新たな学びにつながるのです。

先日は、「新しい掃除機の商品開発を行う」というケースを扱いました。マーケティング、品質、製造過程について、多国籍チームの中でクリエイティブに考え、問題解決もしていきます

そういったワークを通じて興味深いのは、やはり国籍によってコミュニケーション方法の傾向があることです。会話を独占しようとする参加者もいますし、会話に入らず傍から様子を見ている参加者もいます。そういった場でこそ講師の腕が試されます。話し続ける人には少し聞く方に時間を使うよう伝え、発言をしない人には意見を言うように促すことで、講師はその場を上手くコントロールします。周りから学ぶ姿勢を持つことで、コラボレーションを生むことができることを理解してもらうように働きかけています

多くのエグゼクティブは、自分の本業については英語で話すことができますが、政治やリーダーシップの信条などについて質問をすると、答えることができない傾向にあります。彼ら・彼女らが自らのコンフォートゾーンを抜け出し、英語で話すことが出来るトピックの幅を広げることで、より自由に英語を使えるようになるのです。

 

学び続ける大人に必要な”Good English”の定義

布留川瑛美: 多彩な大人たちが集まるLSEですが、大人が学ぶ、しかも多国籍な環境で効果的に学ぶには、何が必要だと思いますか?また、学び続ける大人にはどんな特徴があると思いますか?

ブッシェル氏: まず私たちが重要視しているのは、“What is good English?” の定義です。LSEにおけるGood Englishの定義は以下の4つです。

1.    流暢さと正確さ

2.    ボキャブラリーの豊富さ

3.    場面に応じた言葉の使いわけ(フォーマルさ)

4.    異文化適応力

例えば、「正確さ」という意味では、自分の間違いを自ら気づき正す能力(Self-correct)がとても重要です。専門用語ですが、“Fossilized Errors”(化石化された間違い)という言葉があります。自覚のないまま間違った用法を使い続けてしまい、それが固定化することです。例えば、“They goes”や“He go”など単純な文法の間違いです。間違いのパターンは人それぞれ違うのですが、この三人称 “s”の間違いには多くの人が悩まされています。この間違いのパターンを壊すことが重要です。例えばこの三人称“s”の間違いであれば、参加者が英語を話している中で、間違えたら度に“S”と一文字書かれたカードを見せます。これを繰り返すことで、言葉を発する前に頭の中で間違いに気づき、自ら間違いを直し、正しい文法で発言できるようになります。

Wednesday Blue(水曜日の憂鬱)を乗り越える

こういったトレーニングを初日の月曜日から始めるのですが、多くの人がその週の水曜日までには自分の英語の間違いに自ら気づくことができるようになります。非常に興味深いことに、人は自分の間違いに気づくと自信を失ってしまう傾向にあります。多くの参加者が、「なぜ自分の英語力は下がってしまったのか?」「自分は英語が上手いと思っていた。」といった発言をし始めるのが大体、水曜日です。そのため、LSEではそのパターンを“Wednesday Blue”(水曜日の憂鬱)と呼んでいます。その“Wednesday Blue”が訪れたのを見届け、講師は参加者が自信を取り戻すことができるように、一緒に伴走するのです。

 

日本人学習者の強みと弱み

布留川瑛美: ブッシェルさんから見て、グローバル環境で学習や議論をするとき、日本人はどのように見えますか?日本人学習者の強み・弱みは何だと思いますか?

ブッシェル氏: 前提として、日本人といっても個々人で大きな差はあります。それを踏まえた上で日本人の傾向という意味でお伝えすると、やはり他の人が会話をリードすることを待つ傾向はあると思います。日本人もどんどん発言して良いと思います。ただそれは日本人の学び方の特徴であるので、トレーナーはその傾向を理解して、日本人に対しては名指しで発言を促すこともしています。

日本人は話の途中で相手を遮ることをしないですし、自分がされると驚くか、失礼だと感じるのではないでしょうか?これもある国籍の方々にとっては全く悪気がなく当たり前のコミュニケーションスタイルであり、文化の違いです。他の人が話していても意見を言い始めてしまう人は、頭の中で考える前に発言をしています。彼らは話すことと考えることを同時に行いながら、最善だと思う意見までたどり着こうとしているのです。この点は日本人にとっては慣れないかもしれませんが、こういった背景があるのだと知ることが、強い異文化対応力につながっていくと思います。

最後に、コミュニケーションスタイルという点で、日本人の方々には、欧米の人たちと会話をする時は情報を多く伝えることをお勧めします。例えば、「どこに住んでいますか?」という質問に対して、「東京に住んでいます。」という回答だけではなく、「東京の○○という街に住んでいます。ここは子どもがいる家族が多く住んでいて公園や図書館も多く・・・」など、聞かれたことに対する回答+αで話し、自己表現をすることをお勧めします。

 

オンラインでも目指すゴールは同じ

布留川瑛美: コロナウイルス感染防止のため、最近ではオンライン留学も行っていますね。詳しく教えてください。英会話レッスンのオンライン版とは何が違うのでしょうか?

ブッシェル氏: やはり、語学学校としての価値は、多様性から学ぶことだと思っています。オンライン英会話レッスンは、多くの場合、1対1のマンツーマンレッスンになります。しかしマンツーマンだと、どうしても参加者が学ぶより、「講師が参加者に慣れる」という現象が生じてしまいます。国籍や職業も異なる多様なメンバーとともに、英語を学ぶという共通ゴールを達成すること。それが語学学校の使命です。そのため、私たちのオンライン留学でも多様性を重視しています。

布留川瑛美: やはり、ビジネスパーソン向けの語学学校としての歴史と実績があるからできることですね。とても興味深いお話をありがとうございました。

最後にブッシェル氏からの日本人ビジネスパーソンに向けたメッセージ動画をどうぞ!

お話をお伺いしたのは

マーケティング担当 

スコット・ブッシェル 様

20年以上に渡り、英語の学習に携わる。2011年からLondon School of English (LSE)で、講師およびマーケティング担当として活躍している。前職では、ロンドンの日本人駐在員とその家族向けのコミュニケーション支援も行っており、日本に関する造詣も深い。