INTERVIEW 事例紹介

IMD(上):トップであり続けることの覚悟とその実践

IMD 高津尚志 様

海外ビジネススクール

DEEP DIVE対談:IMD高津氏×グローバル・エデュケーション布留川

「DEEP DIVE INTO パートナー」
グローバル・エデュケーションの、個性豊かで才能溢れるパートナー講師や教育機関の方々に、代表の布留川勝がカジュアルタッチで考えを聞いていくシリーズ。人材開発担当者向けセミナー、グローバル人材育成研究会(G研)の終了後にアフタートークとして収録が始まったこのシリーズ、パートナーの人となりが知れると好評につき、続けることになりました。カジュアルトークの中からにじみ出る、各対談者の個性や信条、お楽しみください。

IMDは、スイスに根差し、世界に展開するビジネススクールです。幹部教育(エグゼクティブ・エデュケーション)に特化したプログラムでは世界  トップクラスの評価を得ています。今回は、当社代表の布留川がIMD北東アジア代表である高津尚志氏にお話をお伺いし、多岐にわたる話題をお話いただきました。


勇敢さを持ってお客様に価値を提供する

布留川高津さんはIMDのお仕事を始められてから今年で10年目ということですが、この10年近くを振り返ってのご感想をお話いただけますか?

高津日本経済に関してはIMDの「世界競争力ランキング」での日本の順位の一貫した低下傾向にも明らかなように、苦戦が続いていると思っています。一方でIMDという組織の一員としては、私はこの10年間、グローバルリーダーの育成分野において世界トップの機関であり続けたいというIMDの意志の強さ、それを実現するための戦略の確かさとそこに集まる人材の質に驚愕し続けました

布留川それはすごいことですね。意志の強さというのがあるんですね。

高津例えば、先日、IMDの全スタッフミーティングで学長をはじめとしたマネジメントチームから、自分たちは幹部教育分野で世界トップであり続けるのだ、素晴らしい競合もいて彼らも素晴らしい仕事をしてきているから、自分たちはさらにその上を行かなければならないのだ、という非常に強い決意表明がありました。IMDは今までオープン、パイオニアリング、コラボラティブという三つの柱からなる組織理念を持っていたのですが、4つ目の柱としてブレイブ、つまり勇敢さを加えることになりました。「トップであり続けるための勇敢さ」なのですが、それはクライアント企業が要望されることが素晴らしいというのであればそれをきちんと実現するし、もっと違うやり方があるのではないか、そのクライアントはもっと違うものを目指すべきではないか、とIMDが考えた時には、プロとしてクライアントにチャレンジしようということです。チャレンジの結果、短期的にはその案件を逃すことになったとしても、勇敢さを示すことによって、クライアントの私たちに対する長期的な信頼はきっと増すのではないか、と思っています。

布留川:それはとても正しい方向だと思います。私もこの仕事をしていて、おっしゃるような勇敢さを持ちたいし持とうとしているけれども、時には一筋縄ではいかない場面もある訳ですよね。だから戦略的に、場合によって失うものもあるかもしれないが、長期的に見れば信頼を生むんじゃないかっていうことには、非常にピンとくるんですよね。

高津:勇敢さを持つことによって目の前の案件が成立しないかもしれないというのが常に恐怖なんですよね。勇敢さを持つためには余裕が必要です。その余裕は、他の様々な場面できちんとした仕事をして様々なクライアントから信頼を得続けているという基盤と実績、そして自信に根差すものです。 クライアントとの真剣な話し合いの中で、IMDとしてこういう形であれば他にはない価値が出せるはずだという自信を持ち続けるには、IMDの一人ひとりが個人として、そして組織としてどうあるべきか、どうするべきか、という覚悟が問われています。

 

トップであり続けることの覚悟

布留川:素晴らしい方向性ですね。IMDが世界トップであろうという強い決意というのはどこから来ているんでしょうか?具体的にトップとは何を意味するのでしょうか?

高津:エグゼクティブ・エデュケーションや、企業変革をサポートするという分野において世界トップであり続けたいと言っています。例えば、英フィナンシャルタイムズ紙のランキングで、IMDはオープン(公開型短期)プログラムでは世界トップで、エグゼクティブ・エデュケーション全体でもトップ3というのをこの8年間堅持しています。常に自分たちはそういったレベルでありたいと思っています。ランキングは一つのものの見方に過ぎないですが、最終的には、クライアントや参加者の方々の評価によるものなので、それが高いということはとても重要ですし、それを維持する、あるいは更に高めるためにはどうしたらいいのかを常に考えています。トップであろうとすると、組織がものすごくピリッとするんですよね。もちろん、完璧な組織ではないので全てがうまく行ってるわけではないですが、例えばこの数年間でもどんどん新しい教授陣を採用しています。世界一のエグゼクティブ・エデュケーション機関であるIMDに来れば非常にレベルの高いクライアントのマネジメント層とプログラムを通じて真剣勝負ができて、その結果、その会社の経営にインパクトを与え、ひいては社会にインパクトを与えられるであろうという機会に惹かれて、極めてレベルの高い人が入ってくるんです。ピリッとした組織だからこそ、ピリッとした人が集まって、ピリッとした仕事ができるっていう、この循環は素晴らしいな、と私は思っています。そこに9年間身を置き続けられてきたというのは、私自身にとっても素晴らしいことだなと思っています。

布留川:それはいろんな組織が理想とする姿ですが、なかなか達成できないことでもありますよね。

高津:私は、社会人デビューが日本興業銀行なんです。日本興業銀行は、少なくとも当時は日本で最高・最善の銀行であるということを自他ともに認めていました。それからボストンコンサルティンググループとリクルートでキャリアを重ねました。それぞれ、その分野においてトップクラスであると認められていて、かつトップクラスであることを自らに課している会社だったので、そういったピリっとした感じが私はすごく好きですし、そこにいると背筋が伸びる感じもあって、IMDもその点が同じで良かったなと思っています。この30年のキャリアをいま振り返ってみると、すべてのドットがつながっているという感触があります。日本企業のグローバル化の推進に金融・戦略・人と組織などの面から貢献しようとし続け、今のIMDでの仕事につながっています

布留川:素晴らしいキャリアというか、ドットのつながり方がすごくいい感じですよね。

先進国共通の悩み:少子高齢化と経済成長の停滞

布留川日本の実質経済成長率(GDPの伸び率)の低さについてはどう思いますか?例えば1960年の実質経済成長率は13.1%もあったのに、近年は1%前後で推移しています。銀行やコンサルティング会社での勤務経験をお持ちの高津さんには、この日本の低成長時代はどのように見えますか?

高津: 仕方がなかった部分と、そうでなかった部分があると思います。ヨーロッパの先進諸国の多くでも、少子高齢化が進行し経済成長が鈍化しています。国によってはその中で社会不安が抗議活動や投票活動という形で顕在化しています。日本でも若年層の貧困比率の増加を含む、将来に向けた大きな課題を抱えています。ヨーロッパ諸国のひとたちに「日本経済が成長しない、問題が多い」と嘆いても「いや、それは日本だけの問題じゃないよね。うちの国もそうだよ」という反応です。ただ、ひとりあたりのGDPや生産性といった指標では、日本はこれらの国々と比較しても著しく順位を下げていて、マクロの文脈だけでは説明がつかないです。平成の30年間で世界経済での日本の存在感と競争力が大きく低下したことについては、リソース配分の失敗などを含めて、さまざまな人たちが優れた検証をしています。私も現在、IMDの世界競争力ランキングのデータをベースに、考察を進めているところです。
ネットでつながるバーチャルな世界、という一つの大きな成長市場における日本の存在感、また、よりリアルな肌感覚でとらえやすいアフリカや中東などの成長市場における日本の存在感の欠如には大きな不安を覚えます。東南アジアも含めて、こういったバーチャルとリアルの成長市場にどう取り組み、どう連携して成長に貢献し、自分たちも成長の果実を得るのか、という観点は大切です。IMDがシンガポールに拠点をつくったり、ドバイでプログラムを開催したりしているのも、これからの世界において意味ある存在であり続けたいからです。

布留川やはり戦略上、アジアや中東を非常に重視していくという形ですよね。

高津:そうです。それから、バーチャルな世界。さきほど、世界トップであろうとする意志、そのための戦略と実行、そして集まる人材についてお話ししました。この他の具体的な成果としては、数年前にデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する研究所を作って、そこで世界屈指の研究・教育を行っています。さらに参加者の修了率が92%という、とてつもないオンラインラーニングを設計、提供しています

 

修了率が92%のオンラインラーニング

布留川:そんなに高いんですか?

高津:高いんですよ。準備の質が良かったんだと思います。TEDなどが面白くてクオリティが高いのに無料である一方で、IMDは従来型の対面でリアルに行う高価なエグゼクティブ・エデュケーション・プログラムを提供している。その中で、IMDとしてオンラインで何をやるのか?というのは戦略的に非常に難しい判断なんです。IMDはどういう判断をしたのかというと、まず第一に、映像としてのクオリティを圧倒的に上げました。単に授業の風景を撮るのではなく、オンライン用に教授にメディアトレーニングを施し、ハリウッド出身のディレクターが監督して、観ていて飽きないコンテンツを作りました。第二に、5週間あるいは8週間のプログラムなのですが、毎週宿題を提出しなければいけないという構成にしたこと。三番目がIMD側でリアルなコーチを付けて、例えば課題の添削や質問に対して一人ひとりの参加者をサポートするという仕組み。そして、四番目が孤独にならない工夫。参加している人たちは同じ期間に参加しているので、他の参加者と一緒にペアで議論をして宿題を提出するとか、グループで議論をして宿題を提出するなどを組み込んでいます。

布留川:なるほどね。そこは非常にうまくできていますね。オンラインにありがちな途中で辞めてしまったりする不安を取り除いていますね。そこまでサポート体制を整え、他の受講者との情報交換も出来るというのは非常に魅力的ですね。

高津:おっしゃるとおりです。他の参加者と議論したり宿題を提出しなければならないので、他国にいる参加者と時差の関係を踏まえてミーティングを行う時間を決めて議論する、その内容をどうやってまとめていくのかということもみんなで相談して行うわけです。内容だけではなく、グローバルでバーチャルなコラボレーションが学べると評判がいいんです。活用してくださっている日本のクライアントも、参加者満足度がとても高かったとおっしゃっていました。

布留川:先ほど無料のTEDというお話が出ました。有料だけれども、ビジネススクールより安いCourseraなどのオンラインプログラムもあります。この辺はどう見てらっしゃるんですか?

高津:私自身はそこの設計の専門家ではないのであくまで観察レベルでしかないのですが、エグゼクティブの学びでは、「知識を学ぶ」というのは一つの要素に過ぎないんです。それは大事ですが、学んだ知識をベースに自分のビジネスの環境や状況を考えた時に、どのような意味付けを行うのか、どう実践に落としていくのかがすごく重要ですよね。意味付けと実践への落としこみの部分がIMDのオンラインラーニングの強みです。だから5週間あるいは8週間のプログラムに参加する前には、自分はこのプログラムに参加することで何を実現したいと思うのか、ということも書いてもらっているんですね。例えば、単にイノベーションのやり方を学ぶのではなくて、自分は今こういうイノベーションのチャレンジがあるから具体的なビジネスのアイデアを考えたい、というところまで書いてもらいます。そうやって参加表明をすると、勉強のための勉強ではなく、自分自身の抱えている課題に対応するプログラムを課題意識に沿って選び、活用していただくことが出来ます。

布留川:日本では、なかなかこのようなプログラムは言語の問題もあって敷居が高いという人もいるのですが、例えば字幕は出るのですか?

高津:映像については英語の字幕を出すことが出来ます。ですから、聞くのはしんどいけれども読むことはできるという人は内容は理解できる可能性があります。ただ、そこから先のグループディスカッションやペアワークは英語がある程度できないと難しいという事実はあると思います。一方で、DXに関するオンラインプログラム「Digital Disruption」は日本語版も作りました日本語字幕を作って、教材も極力日本語化し、コーチも日本人の方にお願いする。大きな手ごたえがあったので、このDXに関するオンラインプログラムの日本語版は2020年も展開予定です。

 

DXの失敗例を読み解き、そこから学ぶ

布留川DXに関してはシリコンバレーにあるスタンフォード大学やUCバークレーは地の利がありますが、ヨーロッパのIMDで学ぶということにどのようなアドバンテージがあるのでしょうか?

高津もちろんシリコンバレーにあるというのは、デジタルビジネスの中心地のひとつでありますし、素晴らしいアドバンテージがあると思います。その中でIMDが日本企業にとってよりお役に立てるとすれば、いくつか要素があります。第一にヨーロッパにあるIMDからは、シリコンバレーと中国で起こっていることを等距離に見ることができます。現在のデジタルビジネスの集積地としてシリコンバレーと中国は突出していますが、IMDだとどちらか一方ではなくどちらも等距離で見られるので、知見のバランスを保つことができます。

二番目が、課題意識と視点です。どうしたら「既存企業」がデジタルディスラプションに対抗できるのか、あるいはDXを自ら興せるのかということが視点になっています。いくらGAFAがやっていることを日本企業が学んだとしても、同じことはできないし、すべきでもない。どうしたら自分たちならではのDXができるかを考えないといけないです。そういう意味で、ヨーロッパを拠点として、ヨーロッパ・中東・アフリカの企業ともコラボレートできて、そこからの示唆をまとめることができるIMDの知恵は、日本企業によりダイレクトに役に立つ可能性があると思っています。苦しみが同じだから。

IMDはアメリカのシスコシステムズと共同でデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する研究所を立ち上げました。昨年はこの研究所の成果として『DX実行戦略』(日本経済新聞出版社)という本を出版しています。この本では、基本的に既存企業のDXはほとんど成功していないという認識から始まっています。失敗確率は調査によって違いますが、例えば78%から95%の間だということです。失敗例をつぶさに検討すると失敗の理由が見えてきますし、逆に言えばこの辺をうまくやれば成功確率が高まるし成功している企業もある、ということです。シリコンバレーや中国に行って現場を見て圧倒されるという観察も大事ですが、既存企業である自分たちはこれからどうしたらいいのか、あるいはどのように新興国や新興企業とつながっていくのかというガイダンスとしてはIMDの知見はとても大切だと思っています。

 

シリコンバレーの優位性は続くのか?

布留川アメリカでは世界中のトップタレントに学生ビザを発給し、能力はあっても学費を払えない人材には奨学金を出し、シリコンバレー周辺の教育機関にどんどん集めています。そしてGAFAをはじめとするIT企業は修士号や博士号を取得したトップタレントを国籍問わず高給で採用する。私も時々シリコンバレーへ出張しますが、あの仕組みは日本ではなかなか真似できない。中国では、アメリカに留学しシリコンバレー企業で活躍したトップIT人材が中国に戻り、BATHと呼ばれるIT企業で活躍したり、起業したりする新しいシステムが出来上がりつつあります。そういう人材を海亀と呼び、国の政策として優遇している。

シリコンバレーと中国がトップタレントを採用してイノベーションをどんどん興していこう、という動きをますます強める一方、日本は、年功序列で日本人男性中心の企業文化から脱しきれていない。シリコンバレーからも中国からも、日本はこのまま競争力がない状態でいてほしいと思われているのではないか、と私は思っています。そういう構造の中で、シリコンバレーに圧倒的な富が集中している側面もあると思うのですが、こういうシリコンバレーの構造は、高津さんから見て、サステイナブルなものでしょうか?それとも一過性のものに見えますか?

高津おそらく二つの論点があります。一つには、優秀な人材を大学院に集めて教育してベンチャー企業に供給するという意味でいうと、シリコンバレーは世界に稀有なエコシステムを作っているんですよ。日本にもシリコンバレーのようなものを作ろうという議論は30年以上前からありますが、いまだに成功していません。またアメリカにも、第二第三のシリコンバレーは誕生していません。ということは、意図した部分もしなかった部分も含めて、あの場所に人材と技術のとてつもない集積が起こった結果がシリコンバレーなのであり、同じようなものを別の場所に意図的に複製するのは相当困難だと考えられます。第二第三のシリコンバレーは生まれないという意味では、この先もシリコンバレーの優位性は続くと思います。

また二つ目の論点としては、GAFAに危機があるとすれば、個人のプライバシー侵害などの批判に耐えられるかということがあります。例えばフェイスブックは「人と人とをつなげる」ということを謳いながら、結局はフェイスブック登録者のプライベートな情報を「商品」として広告主に提供してお金を稼ぐビジネスモデルなのではないか、という指摘があります。Googleの広告システムも同様です。GAFAが作っているビジネスモデルは、Amazonは別として、基本的に「消費者が商品になっている」という仕組みなんですよ。そのことに多くの人たちが気づいてきて、これは果たして人間の生活の質の向上に貢献しているだろうかとか、長期的な人類の幸せに貢献しているんだろうかという議論があちこちで出てきているんです。そのことに対する世界的な懐疑心はこれから増していくと思います。そうすると次に起こることは、どうしたら消費者であり生活者である人のことを本当に尊重するようなイノベイティブビジネスができるのか、ということを考える方向に行くんだと思うんですよ。シリコンバレーに盲点があるとすれば、彼らのあまりにも資本主義的で商業主義的なドライブがかかりすぎているものに対して、世界的に「いやいやちょっと待ってよ」という声が挙がってきていることで、そういう時に変化が起こるんだと思います。先ほどAmazonの場合は別、と申し上げたのは、基本的に消費者は消費者のままでいられるんですよ。消費者が商品になっていると感じることはない。そこが違うところです。

昨年ドバイでのIMDのOWP(Orchestrating Winning Performance)プログラムで、ゲストスピーカーの一人としてアラブ首長国連邦のAI担当大臣が登壇しました。AI担当大臣を2017年に設置していることにも驚きましたが、彼がまだ29歳ということにも驚きました。講演の内容は、中東はかつて知識集積の中心地だったが、15世紀半ばにグーテンベルクが活版印刷を発明したときに偽物のコーランや宗教関係印刷物が出回る可能性を懸念してそのテクノロジーを拒絶した。活版印刷によりヨーロッパでは書物の民衆への浸透や大学教育の発展が起こり、その後の興隆につながったが、活版印刷を取り入れなかった中東は反対に遅れを取ったと。そのような歴史的スパンで考えると、AIは世の中を大きく変えるテクノロジーであるため、活版印刷のときの轍を踏まぬようAIを国として真剣に学びきちんと活用したい、ということでした。AIを最高・最善の形で使う国家になるのだと。

布留川:先ほどご指摘されたようにGAFAのビジネスモデルを批判する声が大きくなってきています。昨年はフェイスブックの仮想通貨「リブラ」も発行が延期されています。しかし、同じ仮想通貨のテクノロジーでも、開発途上国などで貧困のため銀行口座を持てない人々の送金に活用されているというポジティブな面もあって、こういうテクノロジーの使い方はSDGs的だと思いますが、どう思いますか?

高津2019年11月にケニアを訪問した際にM-Pesaという携帯電話を使った送金システムを実際に見ることができました。これは携帯電話会社が作ったシステムなのですが、当初は携帯電話の通話料をプリペイドカードで買って自分の携帯電話にチャージするだけだったものを、他人の携帯電話やその他のところに送れるように改良したものです。現在はケニアでの決済手段として圧倒的なシェアを持っています。これは、フェイスブックのように誰かのプライバシーを商品化しているということとは全く違う話なんですよね。送金などの人々のニーズに応えることとプライバシー情報を収集して商品化することは切り離せるのですから、このような仕組みが最終的に支持されることになるかもしれません。AIを使ってこうやって儲かるという話ではなく、先ほどのアラブ首長国連邦のAI担当大臣が話していた、真に人類に貢献できるAIの使い方を生み出したいという望みも、ベースは同じだと思います。

後半記事では、日本の人材について語ります!後半記事はこちらから


お話をお伺いしたのは

IMD北東アジア代表

高津尚志 様

経営幹部育成で世界トップランキングを誇るスイスのビジネススクール、IMDの日本・台湾・韓国における代表。日本企業のグローバル経営幹部の育成施策の設計や提供に従事。

早稲田大学政治経済学部卒業後、1989年に日本興業銀行に入行し、その後ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て現職。仏INSEADでMBA取得。桑沢デザイン研究所基礎造形専攻修了。主な共著書に『なぜ、日本企業は『グローバル化』でつまずくのか』『ふたたび世界で勝つために』(ともに日本経済新聞出版社)、訳書に『企業内学習入門』(シュロモ・ベンハー著)がある。

【IMD】
スイス・ローザンヌを拠点とした、トップクラスのランキングを誇るビジネススクール。企業の幹部教育(Executive Education)に特化したビジネススクール。世界的な専門チームでリーダーを育み、組織を変革し、即効性と持続性を伴うポジティブなインパクトを生み出す。