言わずと知れた日本を代表する総合不動産デベロッパー、三井不動産株式会社様(以下:三井不動産様)。国内外で数々の大規模な街づくりを牽引し、常に業界のトップランナーとして走り続けていらっしゃいます。その強さの源泉は、言うまでもなく「人材」にあります。

三井不動産様は、経営戦略における最重要課題の一つに「グローバル化」を設定され、グローバル人材を積極的に採用・育成されています。異なる環境や文化に適応しながら、周囲を巻き込み、グローバルマーケットで価値創造していくことができる人をグローバル人材として定義。その育成の一環として以下のプログラムを実施されており、当社は、本プログラムの運営を2025年からサポートさせていただいております。
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グローバルOJTプログラム(海外インターンシップ):
・内容:海外のローカル企業やスタートアップに飛び込み、実際の業務を遂行する、実践型プログラム
・期間:4〜12週間程度
・実施国:アジア圏、アメリカ、豪州、欧州など多岐にわたる地域で可能。 -
海外ビジネススクール経営幹部向けプログラム(エグゼクティブ・エデュケーション):
・内容:世界のトップビジネススクールが提供する、次世代リーダーや経営幹部候補、経営幹部の教育に特化したプログラム
・期間:数日~数か月
・実施国:アメリカ、欧州、シンガポールなど
なぜ、国内で活躍する若手たちを、あえて現場から少しの期間離してでも、海外の「アウェイ」な環境へ放り込むのでしょうか?
国内の慣れ親しんだ「ホーム」の環境では、優秀とされる社員ほど、周囲の様子見をしてしまったり、既存の成功体験や判断軸といった、社内の暗黙の正解を求めてしまったりします。だからこそ、言葉も文化も通じない「圧倒的なマイノリティ環境」へあえて身を置くことで、これまでの成功パターンを一度リセットし、何もないところから自走する「真の主体性」を引き出すことができるのです。
今回は、2025年度のプログラムを終えて帰国された4名の皆様に、グローバル・エデュケーション代表の福田がインタビューをさせていただきました!それぞれの葛藤と、そこから生まれたマインド・行動変容のリアルに迫ります 。

(左から、2025年渡航者 岡田有生さん、田中井大歩さん、当社代表 福田聡子、村上遥南さん、南雲 正樹さん)
4名の挑戦~アウェイで見出した己の殻を破る瞬間~
1. 田中井 大歩 氏(インドネシア・バリ島 / 観光業インターンシップ)
「すべてにYESと答える」という姿勢から見出した、言語を超えた信頼関係の築き方
渡航時:入社3年目
期間:4週間
概要:持続可能な観光に特化したソーシャルビジネス観光業で、マーケティング・ツアー企画
英語を用いてビジネスで発揮できるリーダーシップとプレゼンス力の強化を目標に掲げていた田中井さん 。また、海外に行くのであれば、現地のリアルな生活やローカルな部分にしっかりとフォーカスして、異文化体験と学びを深めたいという強い想いがあり、ローカルな環境にどっぷりと浸かれるインドネシア・バリへと向かいました。

「福田:バリ島は観光地のイメージもありますが、実際の現地での経験は、いかがでしたか?」
田中井さん:インターン先は基本的に全員がインドネシア人。言語も価値観も異なる完全なるマイノリティな環境でした。渡航前は観光地のイメージが強いバリ島でしたが、ローカルなバリに飛び込んでみると文化の違いや貧富の格差、インフラの未整備など、必ずしもポジティブばかりでない部分まで一気に目の当たりにし、最初の数日間は圧倒されて疲れもどっと感じました 。毎日日記を書くのですが……書くことが本当にない。「やばいな、何も学んでいない」と思ってしまいました 。
「福田:そうだったんですね!その時は、どうマインドを切り替えたんでしょうか?」
田中井さん:1ヶ月しかないので言い訳をせず、この貴重な機会から最大限吸収しようと気持ちが変わりました 。現地の仲間たちが「これ一緒に食べよう」とすごく誘ってくれるので、マインドを切り替え、まずは、「イエス」と言い続けることにしたんです 。 バイクの後ろに乗せてもらって現地の人たちの屋台へ行き 、インドネシアという大きな枠組みの中でも宗教によって文化や食べるものが全然違う現実を体験しました 。最終的には、観光客が一人もいないような小さい村のバリ・ヒンドゥー教のお祭りに招待してもらえるまで、現地の社員と関係性を構築しました。
「福田:現地の皆さんが大事にしているものを、田中井さんが受け入れてくれたというオファーがさらに、皆さんのマインドも変えたんだと思います。一番の学びをあげるとしたら何をあげますか?」
田中井さん:それは本当にその通りかなと思っています。学びは、「新しい環境に飛び込んだ際の『姿勢』」です 。異国の地には最初は戸惑うような文化がつきものですが、“この地の人々がこの地で生き延びるために編み出した術”であるという考え方に基づき、思い切って従ってみることが最適解であることが多いと気づけました。自分自身がマイノリティに立った時の姿勢、向き合い方を実際に経験できたことは、海外事業本部で将来の駐在を視野に入れる中で必須のスキルになると考えています。
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2. 村上 遥南 氏(アメリカ・シリコンバレー / テック企業インターンシップ) 自発的な行動が道を拓く。現地サミットでの挑戦と、リーダーとしての新たな気づき 渡航時:入社4年目 期間:6週間 概要:デザイン・機械工学を掛け合わせテック企業にて、7~10種類程度の生成AIアプリ -
(画像生成、動画生成、データ分析など)を業務に使用し、提案資料・プロトタイプの作成。
生成AI・ITの最先端を学び、仕事上でどう使われているのかを実体験で学びたい、そして現地での人脈拡大を目標としてシリコンバレーへ渡航した村上さん 。国内ではポジティブな性格を自負していた村上さんですが、世界の中心のスピード感の前に足がすくむ経験をします 。

「福田:シリコンバレーならではの日本とのギャップもあったかと思いますが、実際いかがでしたか?」
村上さん:コワーキングスペースのPlug and Playで業務をしており、インターン先の代表の方から様々な現地のネットワークを紹介していただいていました。ただ、自分としては受け身になってしまっているなと思っていた矢先、ちょうど渡航中に、世界中からテック企業やベンチャーが集まる3日間のビジネスサミットが開催され、参加しました 。当初はグローバルプロフェッショナルを前に英語でどう話しかければいいんだろうと躊躇してしまいました 。せっかくの機会なのに、全然話しかけられず、周りの様子を見て1日目が終わってしまったということがありました。
ただ、その日の夜に「せっかくの機会だし、こういうチャンスは二度とないんだろうな」と改めて深く考えました 。もっと自分から動いていこうとマインドを切り替え、翌日は自ら積極的にいろんな人に声をかけたり、名刺交換をしたりして壁を乗り越え、人脈を広げることができました 。
「福田:自分から動いてみたら、何か違いを感じる部分はありましたか?」
自分から声かけをできたことが自分の中に安心感を生み、「少し動けばできるんだな」という実感に繋がりました。そこを皮切りに、いろんな方とコミュニケーションをとることができた。まずは初めの1歩を踏み出すことが大事だと改めて感じるきっかけになりました。
「福田:印象に残っている現地での学びはありますか?」
村上さん:参加したイベントで聞いた、女性リーダーの講演が印象的でした。「リーダーであっても時として人間らしく『vulnerableになる(弱みを見せる)』ことが重要である」という教訓です 。そうすることで近しい存在になり、信頼感が深まるとアドバイスをいただいたような感じがしました。帰国後、チーム内で、自分の失敗した経験、大変だった経験などをあえてオープンに話してみました。すると後輩の皆さんも本音を前よりも話してくれて、更に信頼感が生まれたと個人的に感じています。
「福田:自分自身のリーダーシップの源泉に気づく体験だったんですね!帰国後に感じている仕事の向き合い方などポジティブな作用はありますか?」
村上さん:渡航前と比較するとより一層前向きになったと感じています。現地で経験した挑戦の毎日は、正解がない中でどう目標を達成していくのかを考え続けるものでした。その日々は大変でありながらも、とても楽しさを感じるものだったんです。帰国してからは、大変なことも「挑戦」であると捉えることができて、前向きに追求していくべきだなと改めて感じました。社外・国外へ飛び出た経験を通して、社会人になって忘れかけていた前向きな気持ち、挑戦する気持ちを思い出させてもらったと思っています。
3. 岡田 有生 氏(オーストラリア・ゴールドコースト / 金融業インターンシップ ネイティブ環境での葛藤を乗り越え、物おじせずに伝える「気持ち」の大切さを学ぶ 渡航時:入社4年目 期間:4週間 概要:金融業にて、ITチームに所属。IT関連数値分析/ITシステムを使って提言、データを可視化して報告資料作成など。
海外経験はこれまでの旅行以外になく、特に英語のスピーキングに対しては強い苦手意識を持っていた岡田さん。ビジネスで英語を使った経験が一度もなかったため、実企業で働くインターンシップのプログラムに自分が本当に参加して大丈夫なのだろうか、という大きな不安や抵抗感もあったそうです。ですが、せっかくいただいた貴重な機会。「とにかく何でも吸収しよう!」という前向きな覚悟でオーストラリアへ渡航しました。

「福田:行く前はそんな戸惑いがあったんですね!現地での日々はいかがでしたか?」
岡田さん:英語のスピーキングが苦手で、行く前は本当に大丈夫なのかな?と思っていました。実務が始まるとネイティブの方々に囲まれて困りながらの仕事になり、専門的な話になると話についていけない場面も。画面を指差しながら説明してもらっているけれど、何を言っているのかさっぱりわからないという状態でした 。また、現地は数字や目標KPIを徹底的に個人が追って、定時になったら帰るというカルチャー 。元々自分が当たり前だと思っていた仕事の進め方と異なる文化に、戸惑いを感じていました 。
ただ、1ヶ月でスピーキングが劇的に上達するのには限界があるし、わからないことが当たり前なので、物おじせずに何か話してみようと割り切りました 。最終的には、言葉は完璧にできなくても、まずは自分がコミュニケーション取ろうとしている「気持ち」を前面に出すこと、そこが一番大事だなという大きな気づきがありました。
「福田:岡田さんも、圧倒的なマイノリティを感じる部分があったと思いますが、そこからの気づきはどんなものがありましたか?」
岡田さん:一番の学びは、「自分が普段、いかに慣れ親しんだ人間関係や言語の中で暮らしていたか」に気づけたことです。コミュニケーションひとつをとっても文化の違いを感じましたし、現地の皆さんが躊躇せずに私に声をかけてくれる気さくさには本当に感銘を受けました。「自分が逆の立場(日本で海外のインターン生を迎える側)だったら、こんなに温かい振る舞いができるだろうか?」と考えさせられるほどです。また、一緒に働いた仲間も韓国やハンガリー出身などバックグラウンドが多様で、まさに現地に渡航したからこそ得られた貴重な気づきがたくさんありました。
「福田:何か思い出に残っている場面はありますか?」
岡田さん:インターン最終日に行われた会社のクリスマスパーティーでは、社長の発案でテーマを1個決めて2人1組で40秒クイックに喋ってシャッフルしていくというアクティビティがありました 。必死に食らいつき、ほぼ全員とフリートークをやりきりました 。あまり英語がうまくない自分でも、1か月間のインターンを乗り越えられたことは大きな自信になりました 。行く前は抵抗感もありましたが、飛び込んでみるとそんなことも気にならないくらい必死で面白い毎日で、自分を鍛える経験をさせてもらいました。
4. 南雲 正樹 氏(イギリス・マンチェスター / ビジネススクール) 世界のエリートと向き合う中で培われた、自身の意見を発信するマインドと当事者意識」 渡航時:入社7年目 期間:1週間 概要:イギリスのビジネススクールにて経営幹部候補育成プログラムExecutive Educationに参加。
グローバルリーダーとリーダーシップについての議論・対話を実施。
グローバルな経験はもともとなく、渡航前の国内での事前研修において、ネイティブ講師から「自分から意見を言い出せていない」という具体的な指摘を受けていた南雲さん。発言する前に「自分のこの意見が本当に合っているかどうか」を自分の中で無意識に考えてしまい、それが言葉に詰まる原因になっていたことに気づかされたのです。そのため、現地では「まずは自分の意見をしっかりと持って、それを恐れずに伝えること」という明確なテーマを掲げて、イギリスへと渡航されました。

「福田:ビジネススクールならではの、高い壁もあったと思いますが、いかがでしたか?」
南雲さん:壁はとても高かったですね。プログラムの参加者は、英語圏5割、アラブ圏4割、アジア圏1割(日本人は南雲さんのみ)という構成 。5人ずつのチームを組んで議論するのですが、自分以外の全員がアラブ人というチームになったときに、チーム内でアラビア語の会話が始まってしまい、議論に参加ができず。本当に悔しい思いをしました 。1週間のプログラムだったため、焦りもあり、次の日からは「もう自分が最初に話そう」と意識を猛烈に変えて頑張りました。
「福田:そこで、くじけずに立ち上がる姿勢が素晴らしいですね!非常にレベルの高い場だったと思いますが、印象に残っている学びはありましたか?」
南雲さん:実はその後、そのアラブ系のメンバーと仲良くなり食事に行った際、相手から「あなたの夢は何?」と聞かれたんです 。聞けば彼の夢は「イギリスの首相になりたい」というスケールの大きなものでした 。さらにグローバルな視座で仕事をしている彼らは、自国の社会課題や国の課題(サウジアラビアやクウェートにおける石油枯渇後の将来)を自分ごととして解釈し、自分の仕事とどう結びつけるかについて深い次元で理解し語っていました 。
彼らの姿を前にしたとき、自身は日頃から将来のありたい姿をそこまで大きなスケールで描けていなかったこと、そして社会課題と自分の仕事をまだ結びつけられていなかったことに気づかされました。これこそが世界のトップリーダーたちとの「視座の高さのギャップ」なのだと痛感し、本当に強烈な刺激を受けました。
「福田:現地で得たマインドの変化は今にどうつながっていると感じられますか?」
南雲さん:現地で拙い英語を気にする私に、彼らは「あなたの英語を聞いているのではない。あなたの意見を聞きたいのだから全く問題ない」と言ってくれました。この言葉によって、自分の中のマインドセットが大きく変わったんです。研修前は、様子見をしすぎて周囲に合わせるような形で仕事を進めがちでしたが、帰国後は「自分としてどう物事を進めていきたいか」というコアの部分をしっかりと考えた上で、明確に意見を発信するようになりました。
自分がどうしたいのかという意志を軸に置くことで、業務がより一層自分ごと化されましたし、私の思いに社内外のステークホルダーの皆さんが乗ってくれるようになり、関係性も以前よりずっと円滑になったと感じています。自らの意志を持って周囲を巻き込む、リーダーシップの発揮に日々努めています。
なぜ今、優秀な若手を「ホーム」から引き剥がす必要があるのか?
国内で優秀な社員を、あえて「居心地の良いホーム」から引き剥がし、予測のつかない「海外(アウェイ)」の環境に投じることには、実はとても深い意味があります。
国内の職場は、社員にとって非常に「守られた環境」です。同じ言語、阿吽の呼吸で通じるカルチャー、そして先輩たちが整えてくれた社内ルールがあります。
しかし、一歩海外に出れば、これまでの社内実績や国内特有の「おもんぱかる文化」は一切通用しません。自分の意見をしっかりと持ち、それを自ら発信しなければ、その場に存在していないのと同じ扱いを受けてしまう、という現実に直面します。
この「強制的な環境の変化」を経験することで、これまでの行動・思考パターンを一度リセットする。それこそが、慣れ親しんだ殻を破り、何もない環境から自発的に動いていく「真の当事者意識(主体性)」を引き出す最大のトリガーになるのです。
まとめ:研修設計に「2つのキーワード」を組み込む真の意義
今回の三井不動産様の事例から、次世代リーダーの育成として持ち帰るべき一番の本質は、単に「海外で成功体験をしてきてもらう」だけでは、帰国後の持続的な行動変容には繋がりにくいという点です。
重要なポイントは、研修プログラムの中に以下の「2つのステップ」が連動する仕組みが作られているかどうか。
1.「圧倒的なマイノリティ体験」によって、自分の現在地を知る
自社の看板や言葉の優位性が通用しない環境に身を置くことで、自分の今の実力やマインドの限界(成長課題)をリアルに体感し、自覚するステップ。
2. 成長課題に直面した後、「レジリエンスを高めて自走」する
課題を明確に突きつけられた状態から、「自分が動かなければ何も変わらない」と覚悟を決め、主体的な行動を起こして、自力で環境に適応していくステップ。
研修期間中に一度自分の壁に向き合い、そこから自律的にレジリエンス(しなやかな適応力・回復力)を発揮して仲間や成果を作った経験は、帰国後にどれほど不慣れな業務や前例のない役割を任されても、臆することなく前向きに追求できるようになります。
当社はこういった、自社の経営戦略・人材育成戦略に根ざした最適な研修の建付け・対象者の設定といった企画段階のご相談はもちろんのこと、渡航前のマインドセットを高める「渡航前 事前研修」、そして帰国後の気づきを日々の業務に落とし込むための「成果発表会」まで、一気通貫でサポートが可能です。ぜひ、ご相談いただけましたら幸いです。
インタビューをお引き受けいただいた、田中井様、村上様、岡田様、南雲様、本当にありがとうございました!


