布留川 勝の人材育成の現場日記

G研報告(109回)「部下をやる気にさせる上司」、「部下の意欲をそぐ上司」

2015/01/30

グローバル人材育成研究会(G研)

コミュニケーション

ダイバーシティ

管理職研修

先週、第109回G研、『「部下をやる気にさせる上司」、「部下の意欲をそぐ上司」
~上司と部下が求めるコミュニケーションの違いとは~』」を開催した。

■第一部では、私より、「変化」に対応する人材育成に必要な2つの要素として、「ビジョナリーシンキング」と「セルフエンパワーメント」をご紹介した。
世の中には先を見通すことができる人がいて、その人に見えるイメージと発する言葉は周囲を混乱させることがある。
前例や現在起きていることに囚われるのは人の常だが、ごく限られた人には、見えるはずのないものが見えていて、それが出現したときにようやくそれが何であるかわかり、その新しい創造物やサービスはあたかも当然のように存在するようになる。例えば、iphoneはその典型的な例だ。

スティーブジョブスという天才にはそれが見えていた。彼は明らかにビジョナリーである。
多くの人はジョブスは特別な人であり、自分はそうはなれないと考える。あるいは決めつける。
しかし、私はそうだろうか、と思っている。
ジョブスほどのスケールではないにしても、変化に適応するための動態認識力や動的適応力を身に着けることは様々な手法でできるようになる。私は最近様々なワークショップで経験しそのことがわかってきた。
何のためにやっているのか、どこに行きたいのかをしっかり持って生きることが必要だ。
そうすれば、自分のアイデンティティも見えてくる。

私はそんな人材をビジョナリーシンカーと定義している。

ビジョナリーシンキングとセルフエンパワーメントは一対になっていて、お互いがあって成立する関係である。
ビジョンを実現させる戦略を練るのがシンキングである。そして、それを実行に移す時に必要なのがセルフエンパワーメントである。実行のない戦略は絵に描いた餅である。
セルフエンパワーメントとは自分自身の内なるエネルギーやパワーを引き出すことである。
この2要素を備えることにより、自らイノベーションを創造し実行することができる。

セルフエンパワーメントを阻害するのが、自分に降りかかる困難である。
それは、時には人間関係であり、心と体の病である。
そこで、今回はセルフエンパワーメントを保つための重要な要素である「レジリエンス」についても紹介させていただいた。
これは「逆境から立ち直る力、精神的な回復力、心の復元力」という意味である。

当日は、働き方の提言書としてベストセラーの「ワーク・シフト」で著名なロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授が提唱している、3種類のレジリエンスについて述べさせていただいた。

1. 知的なレジリエンス
能力開発をし続け、新たなアイデアを受け止めながら、前向きに形にする

2. 感情的なレジリエンス
労働以外の時間をある程度確保し、心の落ち込みから回復しやすくする

3. 社会的なレジリエンス
多様な人々とのネットワークを作ることで、一つの人間関係が停滞しても、別の人間関係を通して、新たな活路を見出す

変化の激しい世の中、成功し続けることは難しく、時に苦しい状況に追い込まれることや、失敗することもある。

強いだけであれば、ポキッと折れてしまうことがあるが、しなやかさがあれば曲がってもまた立ち上がることが出来る。
変化の時代を生きる私たちにとって、3つのレジリエンスはセルフエンパワーメントをキープする為のツールでありマインドセットである。

■第二部では、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の松島人事部長をお迎えし、ご導入いただいた藤崎講師による全管理職向け研修の企画・検討の経緯、また、研修後、上司と部下とのコミュニケーションが、どのように変わったのか効果測定も含めて発表いただいた。

松島人事部長は、「部下を殺すも生かすも管理職にかかっている。自らのリーダーシップ発揮が部下育成になり、それは会社の業績にかかわってくる。」と言っておられた。私もその通りだと思う。
部下と積極的に、そして頻繁にコミュニケーションをとっている企業は、高い業績を上げる傾向にあり、相互理解とコミュニケーションの比率が組織を活性化させるカギとなるのである。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社では、この全管理職向け研修を実施してから、社内サーベイにおいて部下と上司とのコミュニケーションのスコアが大幅に向上し、部下が上司に対して行う評価も上がったという。

藤崎講師の研修を受講した受講者も、下記のような感想を述べている。

『「何を言うかではなく」、「何を伝え残したいか」が重要であると改めて感じた。相手に残らなければ伝える側の責任であり、伝える情報を自分目線で選択しないで出すことや、立場によって見方や時間軸が異なっているという認識を持たなければいけないと思った。』

部下が上司に求めるコミュニケーション」と「上司が部下に求めるコミュニケーション」の違いについて、再認識することが非常に重要である。

■第三部では、藤崎講師よりコミュニケーションの課題の共有を行い、研修の一部である「目隠しのワーク」を体験いただいた。

これは、ロープとアイマスクを使って行うワークであり、リーダー役に指示書を渡し、部下役には、アイマスクをしてもらう。 リーダーの指示に従って動き、課題達成を目指すという内容だ。

このワークの目的は、「部下の立場に立ってリーダーに求められることを感じること」である。

ワーク終了後には、部下と上司がコミュニケーションを行う上で重要となる下記点について振り返り、皆様に意見をお出しいただいた。

・ゴールイメージの明確化
・進捗状況の共有
・部下への心のケア
・部下からの意見出しの重要性

部下の立場からリーダーに求めるものを理解すること、またリーダーとして部下の期待を確認することは、互いのコミュニケーションを活性化するために非常に重要である。

『「コミュニケーション」は、伝わらないものである』という前提を常に念頭に置き、部下のモチベーションの状況を考えた上で、仕事に対する不安を取り除いてあげること、また、ミスコミュニケーションを防ぐためにも必ず、「全体像」=「指示の目的」を説明することが重要であるを再認識した2時間であった。

<ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の松島様、藤崎講師、エグゼクティブディレクターの福田と>

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