布留川 勝の人材育成の現場日記

G研報告(110回)グローバルで求められる日本人社員を育成するには? ~欧米の視点、アジアの視点~

2015/02/26

グローバル人材育成研究会(G研)

ダイバーシティ

リーダーシップ

先週、第110回G研にインド人とイギリス人のパートナー講師をお招きし『グローバルで求められる日本人社員を育成するには?~欧米の視点、アジアの視点~』を開催した。

■第一部では、私と親日家のインドビジネスコンサルタントである帝羽ニルマラ純子講師で、トークセッションを行い、アジア視点からグローバル人材についてお話しした。ニルマラ講師の考え方は非常に興味深く、刺激的な内容であった。

「アジア人から見た日本企業、日本社員の特徴とは?」という設問では、日本人のスタイルシフトの重要性についてお話しした。高度経済成長期の頃は、日本は技術的にも製品の質でも世界ではNo.1であり、グローバルリーダーであった。しかし、それは今では変わってきている。アジアだけでも中国、シンガポール、香港は勢いが増しており、日本は少し押され気味であるのが現状である。
特に、シンガポール人は非常にグローバルコミュニケーション力、ビジネススキルが高い。初対面でも直ぐに相手の懐に入り、仲良く なれるビジネスパーソンが多い。日本人は初対面の相手とフレンドリーに話すことを苦手としており、関係構築までに時間がかかる。グローバル環境では、いかに速いスピードで、自分から積極的に相手とコミュニケーションをとっていくかが求められる。

 

インドの若者も昔と比べ、考え方や価値観がグローバル化に伴い大きく変わってきているという。今日のインドでの20代の識字率は、ほぼ100%であり、毎年1億人が4年制大学を卒業しているそうだ。その内、半分は理系のエンジニアである。インターネット普及に伴いあらゆる情報がインドにも入ってきたことで、若者は特に「スピ ード感」を仕事でも求めている。
上司の指示の仕方、意思決定の遅さなど、マネジメントスタイルがグローバルスタンダードに合わなければ、よりチャンスのあるグローバル企業で働こうと転職をする若者が多いという。日本特有のコミュニケーションスタイルを全て変える必要はないが、その国に合わせて自分自身をアジェストしていく「スタイルシフト 」の考え方が、日本人グローバル人材には求められる。

「インドでビジネスを成功させるポイントは?」という設問では、下記3つの重要性についてお話しした。

1.採用
2.評価システム
3.エンゲージメント(巻き込む)

これは私も驚いたのだが、「インドで働きたい企業ランキング」では、未だ一度も日本企業はランクインしたことがないらしい 。中には100年以上インドでビジネスを行っている日本企業もいるのだから驚きである。1位から5位は全て欧米企業であり、近年では韓国、中国企業もランキングに入ってきている。

上記3つの中で一番興味深かったのが、「評価システム」である。もちろん評価システムをどこまで現地化するかは、どの企業にとっても課題である。しかし、インドでは、昇進、昇格、昇給、インセンティブなどの評価システムは非常に重要である。これらが整っていないと社員はやる気をおこさない。ポジションを上げるのが難しい場合でも、海外に送りトレーニングを受けさせるや、本社会議で賞を渡すなど、インセンティブを与え、しっかりとしたキャリアパスを見せていくことが成功の秘訣である。
インド人の特徴を理解した上で、人事システムを構築していく、またスピード感をもって現地社員とコミュニケーションすることが、インドで成功するためのポイントとなるだろう。

■第2部では、『グローバル基準での「良い上司」と「悪い上司」の違いとは?』と題し、今回G研初登場となるアダム・カッサブ講師が、グローバル市場で日本企業が成功する方法をお話した。

アダム・カッサブ講師は、組織のグローバル化を強化するために現場から経営層までの参加者を対象とした「異文化コミュニケーション」、「経営戦略」、「個人の価値観やライフミッション」等の幅広いプログラムを実施することを得意としている。

当日は、日本企業がグローバル化する際に課題とされる3つ要素、「マネジメントスタイル」、「リーダーシップ」、「エンパワーメント」の強化方法につい て、ミニケースやワークを実施し、研修の一部を体験いただいた。

ケーススタディは、ある営業所に支店長として異動してきた上司と、そこで働く部下との間で起こる問題点を分析し、解決策を話し合うという内容だ。

色々な意見が参加者からは出ていたが、興味深かったのが「マイクロマネジメント」と「プロセスマネジメント」の違いについてである。これら2つのマネジメントスタイルの大きな違いは、焦点を誰に当てているかである。
「マイクロマネジメント」とは、自分(上司)の利益を軸に考えており、そこに部下を育成したいという考えはあまりないことが多い。一方、「プロセスマネジメント」とは、相手(部下)に焦点を置いており、彼らがなぜ壁にぶち当たっているのかその課題にいたる行動・活動を分析し、結果を最大化するためにプロセスを見える化することである。このマネジメントスタイルは、グローバルのみならず国内でも「良い上司」には、必要とされるスキルである。

その他にも、グローバル環境では従業員との関係作りが非常に大切であることも話題に挙がっていた。従業員との関係が上手く行かない場合、全体ミーティングを実施することも大切であるが、それでは一人ひとりの本音は出ない場合が多い。全体ミーティングは意見交換の場として活用し、個人ミーティングは関係性構築の場として実施する必要がある。特に欧米人は、この見極めが非常に上手い上司が多い。シチュエーションに合わせてどちらが必要とされるか、それを見抜く力を養うことは、グローバル基準での「良い上司」には必要な要素である。

また最後にグローバル環境で成功を収めるポイントとして、「日本の強み/会社の強み」を自分のマネジメントスタイルに入れることの重要性についてもお話しした。 これが出来れば、日本社員は一目置かれる存在になるだろう。製品の質の良さ、おもてなし精神、チームワーク、信頼関係、正確さ、安全性、企業理念など誇れることは日本には多い。これらをプラスしていくことで、よりリーダーシップを発揮し、世界で活躍する日本人のグローバル人材が増えることを期待している。

<ニルマラ講師とエグゼクティブ・ディレクターの福田と>

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