布留川 勝の人材育成の現場日記

「経営塾」はなぜグローバルリーダーを輩出できないのか?

2009/07/24

グローバル人材育成

リーダーシップ

bfdcdd0b.jpg呼称はさまざまであるが、コア人材を選抜し、経営塾を開催している企業が増えている。前回のG研では、私のパートで、この「経営塾のグローバル化」について取り上げさせていただいた。

なぜか?

それは、一般的に行われている経営塾が、意外にもグローバルリーダーを輩出出来ていないからである。
もちろんそれは、私の視点であり、異論があるのは承知で申し上げている。

昨今の経営塾の真の目的は、以下3点を少なくとも併せ持つ人材の輩出ではないだろうか?

1)グローバリゼーションに翻弄されない経営戦略を打ち出す。
2)自社特有のグローバル人材育成を構想し実行する。
3)自らもグローバルリーダーとしてのロールモデルとなる。

グローバルリーダーとはたとえばこんな表現がぴったりする。
これは「東大EMPが開発する「状況を変える人材」の要件」(Diamond Harvard Business Review March 2009)から抜粋した。

課題形成能力を持ち、英語はそれほどうまくなくとも、存在感があり、どこに出しても堂々としていて、話してみると基軸がしっかりとしており、公共の精神もあり、話題や内容が豊かで引き込まれてしまい、自然に場をリードしてしまう、ちょっと強引だがとても魅力的な人物

この中に、「英語はそれほどうまくなくとも、存在感があり、どこに出しても堂々としていて」という表現がある。
この文章を誤って読むと、なんだ英語はそれほどうまくなくてもいいんだとなるが、「どこに出しても堂々としていて」いるには、少なくともTOEIC800程度の語彙力や表現力を持ち、
それらの英語力が発揮能力化されている状態と読まなければならない。

業種にもよるが、業界大手の選抜人材(40代)の多くは、おおむね英語力が低い国内でバリバリ仕事してきて、45歳まで英語などほとんど使わなかった、という人物が主流である。TOEICでいえば、400-600が7、8割といったところだ。

こういう人材を、1年間の日本語による経営塾でグローバルリーダー化するには無理がある。中には、英語レッスンを加えるケースもあるが、1+1=2(講義を日本語で理解し、英語を別に学び、付け加えれば問題なし)というわけにはいかない。

確かに「日本語による講義+英語力」という考えは、論理的のように見えるが、実は抜けもれが多い。そこには、先に挙げた状況を変える人材にある「(話に)引き込まれててしまい、自然に場をリードしてしまう」ためのコミュニケーションスキルが見逃されていることはもちろん、何よりも、「基軸がしっかりしている」ためのビジョンや自己強化していく姿勢など、成長へのドライブとなるマインドセットが欠けているからだ

アジアでますます存在感を発揮し始めているのは、華僑のビジネスリーダー達だ。
彼らは、英語はネイティブか準ネイティブクラス、リーダーシップがあり、グローバルで通用するマインド・スキル・知識は全く問題がない
彼らにも「経営塾」的なコンセプトのプログラムが存在する。

例えば、弊社が提携しているINSEADのシンガポール校などで展開されている経営者教育プログラムやグローバル企業の社内ワークショップがそれだ。弊社の講師陣も、グローバル企業の社内ワークショップのファシリテーションのために年に何度もシンガポールや香港に出張する。もちろん言語は英語である。

そうしたビジネスリーダー達の前では、日本企業の幹部の多くが、会議などで彼らの存在感の大きさに圧倒されている。

グローバリゼーションが加速化する中で、グローバルビジネスを展開する企業の幹部が、英語を苦にするようであれば、それは真っ先に是正しなければならない。もう英語は出来て当然であって、英語さえできればグローバルで通用する、というほど甘くはない

まだ日本以外にも中国や韓国では現地言語でワークショップ行い、英語は別に学ぶというやり方は現存するが、徐々に減少しつつある。

日本においても、リーダーシップ、コミュニケーション、マインドセット、財務、マーケティングコースなどプログラムの8~9割は英語を通して行うことで、使える英語も身に付く

英語力がそれほど高くないコア人材が多い中、そのようなプログラムでは効果がないのではと思われるかもしれないが、元々は優秀な人材である。彼らのモチベーションに火をつけるような仕掛けを作ることで、初めのうちは苦労するが、皆、一年後には大きく変わる

写真はG研の模様

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