布留川 勝の人材育成の現場日記

G研報告(146回) 「人材をいきなり送り込んでいませんか? 」(前編)

2017/07/09

グローバル人材育成研究会(G研)

コミュニケーション

ダイバーシティ

4月26日(水)、「人材をいきなり送り込んでいませんか?」と題してグローバル人材育成研究会を開催した。

前半は私より「グローバル人材がプールできる企業、できない企業」をテーマにご参加者とのディスカッションを行った。

なぜ、グローバル人材が育成できないのか?
グローバル人材がプールできない企業の特徴としては、以下の7点が挙げられる。

1.「要は英語でしょ?」から始まる失敗
→ 「まるドメ人材」+「 英語力(TOEIC600)」=グローバル人材?
「日本語での経営塾」+「英会話レッスン」=グローバル人材?
2.グローバル人材の定義が曖昧
→英語力以外にどんな能力が必要か定義されていない。
3.他社事例を必要以上に気にする
→他社とは、グローバルのフェーズや課題・状況などが同じではないため、参考になるとは限らない。
某社ご担当者は「他社事例ばっかり集まってしまって3年が経った。なんとかしないと。。」
4. グローバル人材育成が体系だっていない
→選抜から底上げまでがシームレスになっていない、さらに良くないことに数年で方針が変わってしまう。
5. 海外拠点の人材には力を入れていない
→現地スタッフの育成については何も手をつけられていない。国内の方向性が固まっていないので海外は全く二の次である。
6. 若手ばかりに研修を実施している
→会社のコアとなる部課長層にはグローバル研修を実施していない。最近は減少傾向にあるが、若手だけのグローバル人材育成はバランスが悪い。若手からも「上司にグローバル人材がいない。ロールモデルが欲しい」という意見も多い。
7. 底上げと選抜の予算配分のバランスが悪い
→英会話レッスンは予算配分が高くなってしまうため、本当に投資すべき人材に投資ができなくなってしまう。英会話レッスンや通信教育は前年から継続で進めやすいが、最重要投資が必要な国内で活躍している魅力的なリーダー人材のグローバル人材化の予算を奪ってしまう。もう一度優先順位をつけてゼロベースで考えてみてはどうだろうか?

上記の特徴をお話した後、「御社でグローバル人材をプールするにあたっての課題は何か?」というテーマでディスカッションをした。今回も大手企業のご担当者に参加いただいたが、以下のように様々な課題が出た。

 

同じ人ばかりに白羽の矢が立つため、人材プールが増えない。
グローバル人事以外は、グローバル人材育成を対岸の火事だと思っている。
・人材を送り込んで、その人が日本へ戻ってきたときにどのような仕事を与えるか、ドメスティックな仕事を与えて辞めてしまわないか?海外へ送り込む人のキャリアパスをどう考えるかが課題。
グローバルで統一のコンピテンシーを作り、同じゴールに向かっていくのが中々難しい。
・まさに、前述の7つの特徴のような課題がある。

 

どうしたら、グローバル人材プールができるか?
まずは、「グローバル人材=英語レッスン」、「グローバル人材=日本語での経営塾+英語レッスン」という発想を何とかすべきである。国内の優秀な人材を選抜し半年~1年かけて「英語でのセッション」を実施し、ネットでの無料教材や低価格の電話レッスン等で「英語の自己学習の習慣化」を促すことだ。 「当社の国内リーダー人材は日本で大活躍していて英語ができない。しかし、彼らにもグローバルで活躍してもらわないと人材が間に合わない。そこで妥協案として出てくるのが日本語の経営塾+英会話レッスン。しかしこれはほとんど無駄な投資になる。欧米もアジアもグローバル企業においては、リーダー育成は英語で行われている。英語でケーススタディを行い、ディベートしディスカッションを行う。日本語で同じことを行い、英会話レッスンをつけたとしても1 +1にはならないのである。

日本語での経営塾を英語でのセッションに変えることで、最初は聞き取れなくても、次第に理解し、最終的に自分の意見を英語で発言することができるようになる。もちろんその期間中は1日数時間の英語の自己学習を受けていただくことになる。効果的な英語学習を行うことによって必ず必要最低限の英語力を身につけることができる。

そして、こうしたトレーニングを通して、L型*1のトップ層20%をGL型*2にすることから始めるのはどうだろうか?トップ層の方たちは、本気になれば、8カ月間の英語のセッションもやり切ることができる。最終プレゼンでも、「よくここまで来たな!」と、私自身感動するほどのプレゼンテーションをするまでに成長している。

*1 Local型人材:国内で活躍している人材
*2 Global&Local型:国内外問わず、また国籍・価値観・専門性・ジェンダーなどの異なるステークホルダーとの協働において、最高のパフォーマンスを常に発揮できる人材

さらにグローバル人材プールができている企業では、5年間かけて国内のコア人材をGL型にするプログラムを続けて、100名のグローバル人材を作りさらにその中の上位20%をハーバードやスタンフォードなどトップ10ビジネススクールのエグゼクティブエデュケーションに派遣するなどしてグローバル人材育成を体系化している。

グローバル人材プールを作るには、2:6:2の法則の上位20%に集中的に投資をし、トップ級の講師によるトレーニングを行い、そして、残りの80%の方たちには、従来の英会話レッスンではない方法(低価格の電話レッスン等)で自己学習を促進させ、互いに学びあう英語学習カルチャーを作っていくことで底上げをする。つまり、英会話レッスンという機会創出にコストをかけるのではなく、英語を学ぶ動機付けや、学習法にコストをかけ、自発的英語学習を社内デファクトにするという発想に転換することで、組織全体を変えていく必要があるのだ。

(後編へ続く)

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